12 ヶ月間ブルターニュの海底に沈めて熟成させました。温度変化が 1 年を通してゆっくりで、水圧にとガス圧がバランスすることでワインのストレスは、ほぼ無いと考えられています。

使われた葡萄はヴリニー、ヴィスイユ、アヴネ・ヴァル・ドールの 3 つのプルミエ・クリュ。昔海底だっ岩
盤が隆起した畑を選択。海の影響を受けた葡萄を海で熟成させているのです。

〈何故海底で熟成？〉
シャンパーニュにとって最も優れた熟成環境とは？それこそが「アビス」の始まりでした。

理論的には温度が 15 度以下で安定しており、充分な湿度がある事。過度な振動や日照が無い。ガスが抜けることなく、過度に圧力が加わる事の無い状態。

これこそがシャンパーニュにとってストレスフリーな状態であると言えそうです。造り手の地下セラーはそのほとんどを実現していますが、唯一ガス圧だけはどうしようもないと考えられていた訳です。

しかし、海中 60m ではボトル内の外に向かうガス圧と水圧がバランスし、均衡するので、それさえもクリアされるのです。

もう 1 つ、奇才エルヴェ・ジェスタンが考えた事が土壌の特殊性でした。

シャンパーニュの中でも白亜質石灰岩が強い畑を選びアビスのベースワインを造ります。この土壌は海の微生物の死骸（コッコリス）と牡蠣の貝殻を起源とする方解石結晶粒からなっており、矢石類（古代軟体動物の甲羅）の化石が含まれていることが特徴。海の土壌から生まれたワインを海の中で熟成させることはワインの精神的なストレスさえも減らす事になると考えたのだそう。

ブリタニーの海深60mで熟成するアビスは2017を試飲した。アビスはテロワールと海底のエネルギーを共鳴させている。カキ殻や海の微生物の死骸を含む純粋な白亜質土壌の、グランド・ヴァレとプティット・モンターニュをブレンドしている。ビスイユ（Bisseuil）のシャルドネ、アヴネ・ヴァル・ドール（Avenay-Val-d'Or）のピノ・ノワール、ヴリニー（Vrigny）のムニエをほぼ等分にブレンド。


ルクレール・ブリアン　アビス　2017 (Leclerc Briant Abyss 2017)

研ぎ澄まされて、日本刀のようにシャープ。レモンコンフィ、青りんご、アプリコット、タイトで、芯があり、直線的に伸びる。莫大なエネルギーの奥にフレッシュ感を秘めている。焦点のあったフィニッシュ。2021年にデゴルジュして海底で10か月間の熟成。半年間は地上で熟成した。

96点。