■輸入元資料より抜粋■
ブリチェックの栽培は厳格なリュット・レゾネで､基本的にはビオ・ロジックで有機肥料を使用します。除草剤などの化学的な介入は行わず､微生物の活動を活発にする為に土を耕すなど基本の仕事をひたすら繰り返す事が大事だと言います。
ビオディナミではボルドー液を多用する傾向にあるのでそれとは違うアプローチを模索し続けています。厳密で細やかな剪定と芽掻き作業によって収量を制限しています。（ぶどう一株あたり収量は６〜8房）収穫は手作業で行い､果実を傷めないよう小箱を使用。古樹のぶどうをふんだんに使い古典的な醸造法で造られるワインは清澄のみを行い､濾過はしません。凝縮感のある味わいと芳醇で強烈な香りを持つワインは十数年の熟成が十分に可能です。
クリストフ氏の代になり､エレガントで優美なスタイルへと変わりつつあり､新たに多くのファンを世界中で増やしています。
〈ドメーヌの歴史〉
ポーランド生まれの彫刻家でもあったジョルジュ・ブリチェック氏は１９３８年に戦禍を逃れるように単身渡仏。ブルゴーニュで生産者としての修行を始め､ドメーヌは１９５３年に創設されました。ジョルジュ氏は､１９８３年に引退し､長男のエドゥアール氏に引き継がれ､２００３年より彼の息子クリストフ氏が３代目としてドメーヌを引き継ぎました。
◇困難な人生のスタート
ヴォイテック･ブリチェック(Wojtek Bryczek/後のジョルジュ)は1912 年にポーランドの都市でマウォポルスカ県に属するポーランド屈指の避暑地､保養地でもあるザコパネ(Zakopane)で生まれました。
彼自身､初歩的な学校教育を受けただけで子供時代は生活の為､狩りなどを行っていました。彼は当時､非常に多くいた農業労働者の一人として身を立てようとしましたが､収入は限られていました。彼は結婚し､妻のマリアと共にポーランドを離れることを決めました。 1938 年に彼らはフランスに立ち留まり､農業で定期的な収入を得ていました。
◇生きるための闘い
1940 年 5 月からすべてが変わります。ドイツ軍がフランスに侵攻したためです。いわゆるパージ(粛清)から逃れるために､ブリチェックはフランス軍に加わり､ポーランド大隊に入れられます。
1942 年､彼はドイツ戦争で捕虜になり､強制収容所に入れられました。幸運にも彼は少し後に逃げられました。過酷な状況下で､彼はディジョンにたどり行き､そこで隠れて妻のマリアに再び会うことができました。ジョルジュ･ブリチェックはラッキーでした。
見た目でもフランス人に似ていたからです。さらに､彼は､ドイツ人兵士が､彼がフランス人だと思うほどフランス語を流暢に話すことができました。また優れた偽造文書と彼の新しいファーストネーム「ジョルジュ」は､カモフラージュを完璧にしました。
しかし､彼の人生は依然として不安定なままでした。 当時､彼は「使用人」のようなものとして､ディジョンの中流階級の家で仕事をしていました。1944 年 9 月 11 日にナチス･ドイツに占領されていたディジョンがフランス･イギリス･アメリカの連合軍によって解放されてから数週間後､夫婦はブルゴーニュのコート･ドールに出発し､この歴史あるワイン生産地にたどり着いたのです。そこでブリチェックはブドウ栽培の知識をスポンジのように吸収し始めました。
◇ワインメーカーとしての成長
戦争はようやく終わりました。それによりブリチェックと彼の妻には､ようやく好きな場所で働く今では当たり前となった本当の自由が手に入ったのです。後の 8 年間で､ブリチェックは様々な規模の老舗ワインメーカーの下で働きました。
彼はワインメーカーの代わりに多くの仕事をしました。彼には自分が仕事をした分だけの対価が支払われました。固
定された労働時間などはなく､馬車馬のように働きました。疲れ知らずで､懸命に働き､たくさんのお金を稼ぎました。それはすべて彼の夢をかなえる為でした。彼は全ての事を注意深く観察し､誰よりも真剣に学んだのです。正直で信頼できる彼は彼のパトロンにも高く評価されていました。
1953 年にようやくその時が来ました。彼は貯金したお金から､モレ･サン･ドニで世間並みのブドウ畑を始めて購入することができました。ブドウの木と土壌は戦争のために長い間､放置されていたため､ワインの品質は一般的にいくつかの例外を除いて味わいに制限がありました。良い立地の畑でさえ比較的安く購入できたのです。
次の年の間に､ブリチェックは追加で畑を購入しました。彼はこれまでの経験から品質に最大限の焦点を当てるこ
とを計画していたのです。
◇外国人恐怖症と戦う
ブリチェック家はモレ･サン･ドニの近くに賃貸で住んでいました。ドメーヌ設立時､ブルゴーニュで外国人がワイ
ンを造ることはとても多くの困難がありました。隣人は見知らぬ人がフランスパンを食べるのを嫌うのです。彼はそれを経験し､乗り越えなければなりませんでした。ただ選択の余地はありませんでした。マリアとジョルジュ･ブリチェックは､戦争中に家族を失っており、ポーランドへ帰る場所はなかったのです。 （ジョルジュのポーランドへの最後の訪問は 1995 年で､それ以降の訪問は実現しませんでした。）
現在､ジョルジュ･ブリチェックの孫クリストフは､モレ･サン･ドニにあるブリチェックの畑を一人で管理･運営していますが､いつも笑顔で迎えてくれます。
〈ブリチェック最高のキュヴェ｢キュヴェ・デュ・パプ・ジャンポール�鏡�｣誕生秘話〉
◇バチカン公認のブルゴーニュワイン
1964 年にジョルジュ･ブリチェックは自分と家族のために家を建てました。できうる限り､自分達だけで行いました。木樽と作業エリアを備えた彼のワインセラーは現在､その建物の下にあります。
ジョルジュには芸術的な才能もあったため､壁や家の他の部分に様々な小さなレリーフが施されています。ワインセラーと庭でも､訪問者はジョルジュの彫刻を見ることが出来ます。
家を建てて 9 年後の 1973 年に､ブリチェックは､ピノ･ノワールの古木（1920 年には既に植えられていました）のある恵まれたブドウ畑を得ることが出来ました。
この購入は､品質面の向上だけでなく､ドメーヌ ブリチェックの知名度を上げるためにもとても役立ちました。
1978 年 10 月､ローマ教皇に同郷であるポーランド出身のカロル･ユゼフ･ヴォイティワ枢機卿（Karol Jozef Wojty?a）/後のヨハネ･パウロ 2 世)が選出されました。ジョルジュのヨハネ･パウロ 2 世に対する思い入れはとても熱く､彼は教皇に自らが手塩にかけて造り厳選した 1920 年植樹のモレ･サン･ドニ 12 本のボトルをローマ教皇庁に出向き､献上しました。
幸運な事にローマ教皇も 1920 年に生まれでワイン愛好家でもありました。ローマ教皇はブリチェックに書面による正式な承認を与え､「Cuvee du Pape Jean-Paul II」というキュヴェ名を与えました。
ヨハネ・パウロ�鏡�(１９２０−２００５)は死後聖人認定され､今も全教会の崇敬の対象となっています。
〈初代ジョルジュ氏。神の恩恵を受けた晩年 〉
ジョルジュ･ブリチェックの息子､エドゥアールが 1984 年にドメーヌを引き継ぎ､その後､孫のクリストフは 2003 年から受け継ぎ､ワインの品質を常に向上させています。
ジョルジュ･ブリチェックは､2013 年 3 月 1 日に 101 歳で永遠のブドウ畑へと旅立ち､ほぼ 2 日前に旅立ったばかりの妻マリアに続きました。
噂では､ジョルジュ･ブリチェックは最後の日まで毎日赤ワインをボトル 1 本飲んでいたとの事で､これはブリチェックのワインの品質の明確な指標であり､ジョルジュ･ブリチェックの不滅の健康の主な要因だとブルゴーニュでは語られています。
生前は医学者の研究の対象にもなっていたそうですが､そのメカニズムの詳細は解明されることはありませんでした。ただ敬虔な信者であった彼に科学では解明できない神のみぞ知る不思議な力がワインを通して与えられていたのかもしれません。
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